街角で見かけた銀髪。
「よお」
声をかけるとあくまで不機嫌そうに、
「ああ」
「こんなところで何してんだよ」
捕まえたのは駄菓子屋の前。
というかむしろ出てきたばかりのところ。
「何してんのって、買い物?」
駄菓子の筈なのにはたから見ても重量のあるビニール袋。
「どんだけ買い込んだんだよ…」
少々呆れながらに言うと、
「んー、2000円分ぐらい?」
とまともな答えが返ってきた。
いや、内容はまともな人がするようなことではないが。
「ひとつ、いる?」
「あ、ああ」
正直甘いものは好きではないが、つい受け取ってしまった。
というよりも受け取らないなんて話はない。
こちらの反応を伺うかのように、落ち込んで見せるから。
もし嘘だったとしても、大袈裟だったとしても見たくない。
いや、好きだし。
俺コイツの事。
何を血迷ったか分からないが、この甘党銀髪天パ野郎の事を好きになってしまったのだ。
「いいのか、もらっちゃって」
「あげるって言ったの俺ですけど」
そうか、そうだよな。
素直に受け取っておこう。
甘いものは頑として譲らないというスタンスだったような気がしたから引っかかっただけなのだ。
「多串君は、特別ね」
それって、どういう意味だろう。
何の気なしに言ったのだろうが、どきりとしてしまった。
特別って、言葉だけでも甘美だ。
おかげで多串じゃない、土方だというツッコミを忘れてしまった。
少しでも幸せを分けてくれた分だけお返しをしようと思った。
「そこの角にできた甘味処にいかないか?」
「あれ、多串くんって甘いもの好きだっけ?」
人に先ほど甘い甘いお菓子をあげたのに。
「多串くんさ、分かってないよね」
肩にポンと手を置かれた。
は? 何を? との言葉がでる前に先ほどの発言なんかよりもよっぽど爆弾発言が飛び出した。
「俺と一緒に食べたいからって言ったら、普通について行くのに」
あくまで主体は俺。
でも、それは一緒に食べたいと暗に言っているのか。
分からないな。
それが、掴めない。
結局話すことは万事屋の眼鏡とチャイナ娘のことで。
「最近新八がよー」
二人はとても愛されている事が分かって、つい嫉妬する。
なんだか分からないふわふわした関係にしているのは敢えてそうしているのだろうなと分かってしまって。
それは暗に避けられているのか。
逃げられているのか。
分からないな。
それが、掴めないから、踏み込めない。
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踏み込ませない銀さんという図を書きたいのだけど難しい。そして、微妙に銀土臭くなったのは何故だろう。