5.手作りのアクセサリー


あるうららかな日。いつもの土手で遊んでいた。
セレーニャが必死に白いぼんぼんのような花をつけた草を千切っていた。

「何してるの?」
「これで花かんむりをつくるんです」
「花かんむり?」
それって、何? と続けて尋ねる声に重ねて、
「こういうやつだよ」
ぽすっと音がして、頭の上に何かが乗った。

引き寄せてみると、白いボンボンが連なってしっかりとした輪になっているかんむり。
「かわいいね」
ロナルドの置いたそれは、しかしセレーニャの方が似合う。
移そうとしたらロナルドにガードされた。

「それは、お前の分。それでこれが俺の分」
別のところから出した花かんむりを自分の頭にロナルドはのせた。

「それからこれが私の分です」
セレーニャの手にした花かんむりは被ったと同時に解けていってしまった。
「また失敗してしまいました。ロナルドみたいにうまくできない…」
「ちょっとみせろよ」
ロナルドの手に渡ったそれはするすると形になっていく。
「ほら、止める部分が甘かったんだよ」
元がセレーニャのだから多少不格好ではあったが、ちゃんとした輪になった。

俺の頭の上に載っている花かんむり。
「これ、ロナルドがつくったの?」
「うん、まあ」
「すごいね、器用だったんだ」
初めて知った、と言うと、
「なめるんじゃねえよ」
と得意げだった。

「だから、ロナルドに教えてもらったのですが…」
「いつの間に?」

この間です。
だね。
と笑ってる二人に置いて行かれている気分。

「エフィムにつくってあげたいって、セレーニャが言うからさ」

じゃあこれは
「これは俺の分だね」
セレーニャの頭にある花かんむりをひょいと取った。
自分の元にあるロナルドのを代わりに渡す。

「でも、こちらの方が綺麗にできているのに」
「そんなものよりセレーニャの造ってくれたこっちの方が大事に決まってるだろう!!」
「そんなものってなんだよ、エフィム」
「そうですよ、嬉しいですけどロナルドに失礼です」
「なんだよ二人してー」
「この、兄馬鹿!!」

「でも、これでお揃いですね」
三人一緒の。
セレーニャが笑ったとき、少し強い風が吹いた。
花かんむりにつかった余りが風にさらわれて空に舞った。
白い妖精のように。

「これをつけていると、このまま風に乗れそうですね」
「一緒に空を飛ぶか!?」
「流石にそれは無理だろ」
「ですよね」

「なんで結託してるんだよー」
「ほら、次ブレスレット作ってみた」
「どうやってやったんですか?」
「本数を減らして…」

まあ、いいや。
セレーニャが笑っているなら。
だからロナルドには兄馬鹿と言われるのだろうな。
「それ俺にも教えてよ! 二人にあげるから!」
「じゃあできたらみんなで交換しようぜ」
「いいですね」

花が散るまでのひと時のこと。

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シロツメクサの花かんむり、実は作り方知らないです。
微妙にオチなかった…。
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