「ねえ、いつから? いつから俺の事好きだったの?」
「ずっと前から」
抱き合ったまま。
体温に心地よさを感じられるぐらい。それぐらいには慣れてきた。
「でも、佐藤君最近まで轟さんのこと好きだったじゃない」
「お前がからかうから仕方なく反応していただけだ」
「そう?」
「ああ」
でもさ、最近色々と有ったじゃないか。
問い詰めてやろうとしたところで、佐藤君は言った。
「お前は、いつから?」
「そうだねー、一年ぐらい前?」
一途に思い続けている君を見て、からかい続けて、でもそれが楽しいと思っていたのは大分前の事。
だから、一年前と言うのも間違っているかも知れない。
「冗談でさ、山田さんの持っている金色のかつらをかぶってったら、佐藤君言ったじゃない。
“前の色の方が好きだった”って」
「それがきっかけかよ」
「うん」
好きって言葉が頭の中でリフレインして。
分かった時には、好きとしか考えられなくなっていた。
「ねえ、佐藤君のずっと前って、いつ?」
「……半年」
ポツリポツリと言葉を紡ぐ佐藤君。
「俺と話してるときに、やたら嬉しそうで。こいつ俺の事好きなんだなーって思ったら、好きになってた」
降りかかってくるソレは甘くて、幸せな響きだ。
「相変わらずヘタレだね。相手の気持ちが自分に向いてるのに、半年も告白しなかったんだから」
「一年、何もしなかった奴に言われたくねぇ」
「それを言うなら、四年…あ、三年半の佐藤君の方がすごいと思うよ」
「でも、さ。轟さんと話している時に入っていたら嫌そうな顔したし、轟さんの写真誕生日にもらってたし、
轟さんと話していた時に顔赤らめてたし、轟さんにこの間はキスしてたし。」
言い訳してよね。
そう言うと、佐藤君は呆れたような顔をした。
「よく覚えてるな、お前」
「当たり前だよ。俺にとっては大問題、ちがう?」
「かわいいのな」
なんだよいきなり、ほだされないから。
そう思っても顔が赤く染まる。
「話してる時って、いつのことだか思い出せないが、それはお前がまだ俺が八千代の事を好きだと思ってるんだろうなと思ったから。
写真は、最後の記念的なもので、今まで一枚も持っていなかったからこそ。
大体好きだったときは言えなかったぞ、そんなこと。
顔を赤らめていたって、時系列的に最近のことだとは思うが、それはあの風邪で俺が倒れた日じゃないか?
それにキスはしてない。
あれはまつ毛にごみが付いているって言ったら、とってくれとせがまれたんだ」
「なーんだ」
言われてみればそんな事。
ただただそれだけ。
ポジティブシンキングなんて言葉から一番縁遠そうな俺が考えていたから
そんなことになっただけなんだって、
解決してしまえば言える事。
「ねえ、佐藤君」
「どうした?」
「ありがとう」
そう言うと一気に顔が赤くなる佐藤君。
体温が心なしか上がってる気がする。
「佐藤君顔赤い」
「お前こそ、心臓の音が聞こえてる」
「あ、ばれた?」
早鐘のように打って収まらない。
「相馬」
「なに?」
「好きだ」
「うん」
白いコックコートの胸に顔を沈めるように頷くと、佐藤君が言った。
「お前は、言って無いだろ?」
「言わなくちゃダメなの?」
「当たり前だろ。俺にとっては大問題だ」
いつからこんな冗談を言う人になったっけ。佐藤君は。
「好き、です」
「なんで敬語だよ」
「緊張してるから?」
佐藤君は楽しそうに、満足そうに笑った。
――言い訳よりも、いまはその笑顔が見ていたい。
五話言わないでよ←・
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- あとがき
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蛇足のような話です。
ただ、相馬さんの勘違いを佐藤さんが直すところっていうのを書きたかった。
これにて終了。
最後はただイチャイチャしてただけのようなものですが!
これからイチャイチャ佐相書きたい。
でも悲恋でなきそうまさんが異常に可愛いと思っている來ヶ谷はSだったりして。
なれそめ編ですが、これがうちの佐相のなれそめです! とかではないので、独立した話として捉えてください。