嫌だなぁ、怖くて手が震えるなんて。
俺じゃないみたいだ。
「勇者さん」
「どうしたの?」
「俺は、」
ほんわかとした雰囲気が一瞬で凍りついた。
知っている、分かっている。
「俺は、あんたが好きみたいです」
「え、戦士? いきなりどうしたの?」
「いきなりですか?」
違うでしょう、いきなりなんかじゃないでしょう。
俺は、わずかに前に足を踏み出しただけだ。
「ちょっと待って。え、それ、本当の…?」
「それを一番よく知っているのは勇者さんだ」
誰が一番俺の近くに居たと思っている。
そして、俺が誰に一番愛情を注いできたと思っている。
知っている筈だ。
「あ、え、戦士…? 言っている、意味が分からないん」
「…いつまで、誤魔化すんですか?」
地を這うような声。これを向けられたら自分でも背筋が凍りそうだ。
分かっていて、敢えてそれをする。相変わらずのドSだと言われそうだ。
「はぐらかすつもりですか」
狼狽したような顔。
いや、困惑したような顔。
「気づいて、たんでしょう?」
誤魔化せるなんて、思っていた訳じゃ無いですよね。
「聞かせてくださいよ、いい加減」
生ぬるい関係を続けるつもりは無くなったんだ。
怖いけど、怖くてたまらないけど、進めるならば進もうと思ったのだ。
震えはとれた。
勇者さんの怯えた顔を見て緊張が解けるだなんて、自分も良い性格してるなと思った。
知ってるんでしょう、その反応が確かに物語っていて。
もう逃げられはしない。
分からないふりなんてできない筈だ。
だからどうか、
「好きです、勇者さん」
真っ直ぐこっちを向いて、話してくださいよ。
目次へ戻る
- 11/14
-
中途半端なところで終わらせてしまいましたが、此処で終わりなんです! 久々なのに短いですね…。