42.一歩を踏み出す


嫌だなぁ、怖くて手が震えるなんて。
俺じゃないみたいだ。

「勇者さん」
「どうしたの?」
「俺は、」

ほんわかとした雰囲気が一瞬で凍りついた。
知っている、分かっている。

「俺は、あんたが好きみたいです」
「え、戦士? いきなりどうしたの?」
「いきなりですか?」
違うでしょう、いきなりなんかじゃないでしょう。
俺は、わずかに前に足を踏み出しただけだ。
「ちょっと待って。え、それ、本当の…?」
「それを一番よく知っているのは勇者さんだ」
誰が一番俺の近くに居たと思っている。
そして、俺が誰に一番愛情を注いできたと思っている。
知っている筈だ。

「あ、え、戦士…? 言っている、意味が分からないん」
「…いつまで、誤魔化すんですか?」
地を這うような声。これを向けられたら自分でも背筋が凍りそうだ。
分かっていて、敢えてそれをする。相変わらずのドSだと言われそうだ。
「はぐらかすつもりですか」
狼狽したような顔。
いや、困惑したような顔。

「気づいて、たんでしょう?」
誤魔化せるなんて、思っていた訳じゃ無いですよね。
「聞かせてくださいよ、いい加減」
生ぬるい関係を続けるつもりは無くなったんだ。
怖いけど、怖くてたまらないけど、進めるならば進もうと思ったのだ。

震えはとれた。
勇者さんの怯えた顔を見て緊張が解けるだなんて、自分も良い性格してるなと思った。
知ってるんでしょう、その反応が確かに物語っていて。
もう逃げられはしない。
分からないふりなんてできない筈だ。
だからどうか、
「好きです、勇者さん」
真っ直ぐこっちを向いて、話してくださいよ。

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11/14
中途半端なところで終わらせてしまいましたが、此処で終わりなんです! 久々なのに短いですね…。
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