触れたら汚してしまいそうだった。
穢してしまうと思った。
真っ黒な。
「好きだ。俺は、お前が好きだ」
決死の覚悟だったのだろう。
でもその真剣な顔こそ、見たくなかった。
想いと呼ばれることを告げられて、やってしまったと思った。
壊した。狂わせた。
昔々、白夜叉と呼ばれ、返り血を浴びながらなお銀に鈍く光った、その色で壊した。
「駄目だ」
何でそのままでいてくれない。
漆黒のつややかなままで。
それを壊したくなかったのに。
憧れていたのがいけなかったのだろうか。
黒色に。
闇色に。
「穢れないままでいてほしかったのに」
触れてこようとするその手から逃れた。
逃れられないと分かっていても、逃げたかった。
その手に本当は縋りたかったから、本当の意味では逃げることはできなかったのに、
逃げた。
「俺なんか、かまうな」
忌み嫌われたこの銀色に何故執着するのか。
でも、言ってきた。
「黒は黒だ」
何にも染まらない。
だから、大丈夫。
なんだよ、それ。
「何が大丈夫なんだよ、ばーか」
言いながら、抱きしめてくれるその腕に、胸に、身をゆだねた。
少しだけ救われた気がした。
関わりを持っても黒は黒だなんて。
その言葉で大丈夫と自分に言い聞かせた。
目次へ戻る
- 10/13
-
今までの中で最短では!?
それにしても思いつくやつ思いつくやつが暗い…