眩しい。堪らなく。
堕ちた僕を救ってくれたその光は、今では僕を押しつぶしそうだった。
どうしようもなかった。
泣いても喚いても、誰も助けてくれなかった。
いや、泣いたり喚いたりするほどの気力もなかった。
ただただ、生きていることが面倒だった。
そんなな中でただ一人だけ、彼女は僕のか細い叫び声を耳に止めて、わざわざ振り返って微笑んでくれた。
たまらず恋に落ちた。それで心は再び力を持った。
ついには彼女を――その光を手に入れた。
始めはよかった。
始めは、よかったのだ。
しかし、手に入れて思い知った。
自分の手に余るものだと、強制的に気が付かされた。
手に入れて、此処にとどめておけるものでは無かった。
目がくらんで、どうしようもない。
目を背けたい。
目が痛い。
「なんだ。浮かない顔をしているなぁ」
現れたのは、闇。
再び会うとは思っていなかった、闇そのもの。
「やめろ。僕はもう、そこから逃げ出したんだ」
いや、逃げおおせたんだ。
「本当に?」
本当に、お前はここから離れたいと思っているのか?
「だってなあ、一緒にいるのはつらいよな。とてもとても、自分の手に入れて良いものじゃなかった」
なんでそこまで分かる。
なんでコイツはそこまで分かる。
闇。
「俺も昔、そうだったからさぁ。別にこっちもわるかーねーぜ。身の丈に合った幸せさ」
闇は、そう言って手を差し伸べてきた。
「俺と幸せにならないか」
「…なぜ?」
あんたはそんな風に、僕の事を気に掛ける。
「簡単さ。一目惚れ。手に入れたいと思ったから、わざわざ手を差し伸べてやるのさ」
闇は甘美な言葉を吐く。
輝きから逃げるためだけに、再びその手を取った。
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同性愛者、むしろ両方ともいける口であるが故に虐げられて心をどっかにやってしまった男の子は、今度こそまっとうな女の人に恋をしました。
が、しかし。虐げられてきた過去が彼を虐げ、また、同性愛者とののしられた過去を思わせる男の人の――闇の手を取ることになるのです。