4.優雅な昼下がり


「紅茶とか無いの、この部屋には」
いつも通り、ふらりと悪魔はやってきた。

「ない。さっさと去れ」
「なんでさー。ティータイムにしようと思ってたのにさ」
ここで優雅に過ごそうじゃないか。
悪魔は言った。

「って無視しないでよ、王子!」
その後もうだうだと言っていたが、いつもよりうるさくない。
もしかしたら無視するのが一番有効な手段かと、しめたものだと思っていたところに悪魔の一言。
「この引きこもり太郎」

ぷすりと頬を膨らませて。
拗ねたように唇を突き出して。
「こんな天気のいい日に閉じこもっちゃってさ」
「じゃあ、ピクニックにでも行こうか」

「王子、本当に!?」
目がキラキラと輝いて、子供みたいにわかりやすく表情が変わった。
でもすぐに疑うような顔になった。
「行きたいんじゃないのか?」

「いやだって、此処でも十分に優雅な昼下がりになりうるから。王子と一緒に居られるってだけで、素敵だもの」
悪魔は楽しそうだった。

「ねね、今のどう? ドキッとした? 俺に優しくしたくなる?」
「なるわけあるか! ほら、早く行くぞ」
「でもなんだかんだで、甘いよね」
知ってる。

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短すぎたー。
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